日本大学藝術学部剛柔流空手道部OB会掲示板NUGK OPINIONS

NUGK OPINIONS

~ 空手という武道を通して何を最終目的とするか ~

田中 元和Genna Tanaka

≪ 8.トレーニング方法 ≫


 8.トレーニング方法

  私の主な練習方法から。

  1)ウエイトトレーニング

  ベンチプレスで100キロから120キロ、プレスで60キロから70キロ~90キロ、スクワットで120キロから140キロやれることで空手の防御に耐え得る体には成り得ます。アームでは40キロから60キロのカール(巻き上げ)ができること。
  極真空手の全日本大会に出る選手は、体を鍛えていることから平均的にベンチプレスは100キロから120キロを挙げる体力を持っている。スクワットは平均的に120キロぐらいか。このぐらいの筋力と体格を持っていれば多少殴られてもびくともしない。
  顔面と金的急所と脇腹ぐらいをカバー出来れば、他はどこを叩かれてもあまり影響がないと言える。アメリカの重量級のプロボクサーやK-1選手も然りで、K-1のヘビー級クラスはもっと重いものを持ち上げている。

  私自身も65歳まではベンチで145キロまで、スクワットは140キロ、カールは50キロ前後でトレーニングをしていた。70歳を超え71歳になった現在は、あまり無理をしないようにしていることからベンチは平均100キロで、スクワットも平均100キロ、カールは平均40キロを10回5セットほどでやっています。
  腹筋は自宅で毎朝食事前に100回1セット、朝食後の午前中に100回2セット、昼食後の午後に100回2セット、午後7時から9時又は8時から10時までの練習後に帰宅してからの夕食前に100回1セットを毎日やるようにしています。
  極真やK-1を含めて、この程度の体作りをしていないと真剣勝負の打撃には耐えられないということです。


  2)ランニング(ロードワーク)=フットワーク主体

...アメリカンクラブの体育館バスケットコートのセンターサークルの円をリング土俵と設定して、その中を大きく左右に円を描きながらフットワークしてのストレートパンチやフックを打つ練習をすること。時には、猫足立ちで左右スイッチして左右前後へ移動をしての突きや蹴りへ攻撃に転ずる練習をすること。時には、バスケットコートを縦に30メートルのダッシュ練習やジムのマシーンで30分から60分軽く走る練習をすること。


  3)サンドバッグ

...私は蹴りと突き(パンチ)はサンドバックで繰り返し蹴ること突くことで、蹴る打つの当てる感じを失わないように日頃からコンスタントにやっています
特に、足の脛はサンドバックを沢山蹴ることで脛と足の甲を石のように固く鍛えると同時に拳も畳やバーベル等を叩いて鍛えています。
  受けのための強いボデイと、攻撃のための強い拳と回し蹴りのための足の脛と足の甲を鍛えることは空手でいえば自由組手に備えているということになります。


  4)回し蹴り

...空手の回し蹴りはつま先の底で蹴るようになっているが、実際につま先側で回し蹴っても当たる確率は10%~20%、それに比べてK-1やキックボクシングで蹴る回し蹴りは足の甲側で蹴ります。これだと多少中心を外れたとしても60%~80%の確率で相手に届いて当たることになります。

,,,したがって、昭和初期から始まった空手のつま先蹴りはあまり現実的ではないということになります。唐手の頃の蹴りには回し蹴りは存在していませんでした。せいぜい、膝関節を蹴るための下段側刀(踵底)蹴りぐらいでした。唐手時代の蹴りは正面蹴りと金的急所蹴りと下段蹴りぐらいだったと言えるでしょう。
  戦後になってから空手に回し蹴りが正式に導入された時点では、現在においてもそうだがつま先による回し蹴りを踏襲し、これを基本の回し蹴りとしているが、相手に当たる確率からいえば10%~20%で、当たったとしても強烈に当たった場合には自分の指の方が衝撃を受け打撃に負けて故障しかねません。

...したがって、ムエタイやキックボクシングと同様に空手の回し蹴りはつま先蹴りではなくて、足の甲か足の脛で蹴ることに改める必要があるでしょう。回し蹴りを得意技にしようとする者にとってはそのように頭を切り替えることです。空手関係者は、つま先の方が打撃力は上だと思うでしょうが、実際に回し蹴ってみると足の脛か足の甲を使った方が相手に与える打撃力とダメージ力は大きいということです。足の甲や脛を使って回し蹴るということは、例えれば野球のバッドを振り回して殴り蹴るという感覚です。当たる確率は60%~80%で牽制打として相手にダメージを与えることにもなります。ムエタイ(キック)の足の甲で蹴る回し蹴りは、空手の戦後から導入された回し蹴りに比べて300年の伝統から生まれた蹴りの歴史の積み重ねで今日に至っています。

  実用性のない現在の空手のつま先回し蹴りではなくて、実用性のあるムエタイやK-1やキックボクシングと同じように足の甲か脛で蹴る「回し蹴り」にこの際改めるべきです。改めるというよりは改善されるべきです。進化する、改善するということはこういうことです。旧態依然とした空手伝承では真の進歩はないということです。


  5)足の脛

  野球のバッドで相手を振り殴る感覚で鍛える。つま先は当たる確率10%~20%だが、足の甲で相手を打つ打撃による当たる確率は60%~80%です。
つま先の場合は、自分の力で指先を痛めてしまう確率が高いし、相手の肩に当たってしまった場合などには指先を痛めてしまうことになるからです。
  足の甲の場合は、バッドの振り殴りと同じになるから相手のどこに当たっても強い打撃となり、つま先を痛めることはほぼありません。


  6)練習&稽古時間

  .10分  柔軟及び準備体操(稽古)
  (5分) 円陣を組んで基本の蹴り突きエンピ等をひと通りやる(稽古)
  (5分) 受け&突き(稽古)
  .5分  猫足移動、団体移動1回(稽古)、相手を前にして1回(練習)
  .40分 「型」を剛法で1回、柔法で3回程(練習)、型は1日で2種程。
  .40分 「柔法組手」:相手を立て一定の繰返しでやる。時々剛法による組手(練習)
  .20分 「柔法組手」:相手と想定外の攻守の攻防。完成したら剛法組手(練習)
  .5分  胸の運動(腕立て又はベンチプレスなど)(練習)
  (5分) 足を沈めて蹴り上がる運動、バーベルスクワット(練習)
  (5分) 腕の運動(ダンベルでカール)(練習)      
  .5分  腹筋運動(相手と組んでやるか、腹筋台を使用)(練習)
  .5分  柔軟運動(練習)

計2時間30分  
2時間の場合は、時間表示の括弧内を省略、型30分。胸、腕、足、腹筋は1日置きにする。



  7)主な稽古と練習

  中段突きの練習、中段蹴りの稽古(素振り)(守る相手を立たせて突き、蹴りをする。)回し蹴り{上段(ハイキック)、中段(ミドルキック)、下段(ローキック)}の素振りと膝関節蹴り、金的蹴りの練習。
  相手への肘打ち抜き、膝蹴り、後ろ蹴り。その他には投げの練習や、顔面への手刀背刀による眼つぶし、目裂きや貫手による喉への攻撃練習。(護身術として)


  8)練習時間の半分は相手を伴ったものにするべきです。

  基本的なものの稽古は毎日でなくても一日置きでもいいから、基本に戻るという意味で忘れないように行うべきだが、毎日必ずやるのは相手を伴った練習にするべきです。
そうしないといつまで経っても、基本移動的な空を切って前進する相手目標の無い「稽古」ものが中心となってしまい、対人相手の柔法的な組手「練習」の時間が無くなってしまうことになるからです。
  重要なことは、先ず対人相手の柔法的組手の練習で相手からの想定外の突きや蹴りに対応できる受け動作や攻撃動作がどのようにして出来るかを研究し、これを習得して、繰り返し反復する練習を忘れてはならないということです。

  「型」は、型という古典伝承芸術としての割り切りが必要で、型競技のための稽古練習と唐手古典舞踊として捉えて各自が独自性を持って演武の習得を心がけるべきものです。
  空手に流派がある以上、他流派との差別化のためにも剛柔流の「基本」と古典伝承の「型」は、現状においては稽古して維持されなければならないことは言うまでもないことです。
また、他の類似格闘技との差別化のためにも「基本」と「型」を習得することで、空手家らしい動きを維持することも当然のことです。

  要は、一日の「稽古」と「練習」に割り当てる時間の効率的な配分にあります。一方的に基本移動的な空を切る移動団体動作稽古を多くして、対人相手の柔法的な組手に費やす時間が無くならないようにすることが大切で、むしろ時間の多くをこの柔法的組手で相手と反復練習することに費やすことが重要なことです。
  近未来における遅くとも50年先には、おそらく空手界は一つの組織にきっぱりと統一されていることであろうことから、若い人たちはその時を目指して、先見の明をもって近代に合った組手主導で、古典の「型」に相当する「攻めのパターン」、「守りにパターン」を確立することが望まれます。

  「突き」、「蹴り」を一人で行うのは野球に例えれば打者の『素振り』であり、組手式の柔法で相手を前にして「突き」、「蹴り」の当て所を確認し、それの攻守を繰り返し反復して練習を行うのは、攻撃では野球の『トスバッティング』による当てる練習に相当し、防御では『ノック』による守備練習に相当するものであると言えます。そして、柔法的な組手による研究課題は身内チームの紅白戦に相当するとも言えるだろうし、実際の空手試合や本組手は野球の公式戦に相当するものとも言えるでしょう。

  身近な例としては、今では誰でも行うゴルフでも同じことが言えます。
  自分自身でスイング練習をしたり、ゴルフ練習場でボールを打ったりしてゴルフの基本的な形をマスター出来たとしても、実際のゴルフ場で芝の上でボールを打つとなると最初のうちはほとんど思うようには打てないことを実感するはずです。
ゴルフ場で実際に常にプレーをして、その反省を持って練習場で基本を意識した素振り練習をして再確認しながら、また、実戦のプレーに戻るという、練習と実戦の繰り返しによって、確実にうまくなっていくということを体感することにあります。
こうしてみると、空手における古来の基本移動や型(分解型を含む)や約束組手は、野球に例えれば『素振り』の状態の基本から、その先の実戦体験に一向に進んでいないということが言えるからです。
これは、空手をゴルフに例えれば、練習場のみで本番のプレーがほとんど無いというに等しい状態と言えることだからです。これは練習のための練習で、進化がありません。

  空手家の一部には、いろんな基本技が出来るということで基本技の玉手箱を数多く持ち合わせていることが空手に精通するスペシャリストであるという錯覚にも似た考えで悦に入っている者がいることは大変に残念なことです。難しく編み出した基本技を沢山身につけたからといって、これが実戦(組手)に役立たないものであれば空手の初心者と何ら変わらないということに目覚めて、空手の本質を知るべきことだと思います。


  「稽古learning」は、基本移動や基本形で組手の基礎となるもの。
……「師匠から弟子への伝達」

  「練習training」は、組手反復でしか覚えることの出来ない体感もの。
……「自主的に目標を定めた目的への遂行」


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